楠ワイナリー

楠ワイナリーは、楠 茂幸(くすのき しげゆき)氏によって2010年に長野県須坂市に開設されたワイナリーです。ワイナリーが位置する「日滝原(ひたきはら)」扇状地は、北信州・須坂市を中心に広がる果樹栽培に最適なエリア。特に高品質なブドウの産地として注目されています。

代表の楠氏は、東北大学工学部を卒業後、約20年間のサラリーマン生活を経て、故郷・須坂市でのワイン造りを志しました。その情熱は本格的で、オーストラリア・アデレード大学大学院に留学し、ワイン醸造学とブドウ栽培学を専門的に学んだほどです。

帰国後、農家出身ではなかった楠氏は畑を借りるところからスタート。休耕地を自ら開墾し、メルローとシャルドネの苗木を植樹しました。また、巨峰の成園3反歩も借り入れ、当時の須坂市における農家の最低条件である5反歩の農地耕作を達成。こうして「楠ヴィンヤーズ」の名のもと、ワイン用ブドウ栽培に本格的に取り組み始めました。

2006年には委託醸造により初ヴィンテージをリリース。そして2010年、念願の「楠ワイナリー株式会社」を設立。翌2011年からは自社での醸造もスタートし、本格的なワイナリーとして歩みを進めています。

ブドウ栽培へのこだわり ー スマートダイソン仕立てと理想的な環境

楠ワイナリーの自社畑は、標高330〜540メートルの扇状地に点在しています。この地形は水はけが良く、栽培に最適な条件を備えています。長野県内では比較的標高が低めですが、その分気温が高く、ブドウの生育期間中の日照時間が長いのが特長です。さらに昼夜の寒暖差が大きく、年間降水量も約900mmと少ないため、ブドウにとって理想的な気候が整っています。

楠ワイナリーのブドウ栽培における最大の特徴は、「スマートダイソン仕立て」という独自の垣根仕立て方式を採用していることです。これは、樹勢の強いブドウの枝が過密になるのを防ぐために、新梢(しんしょう)を上下に分けて誘引し、風通しを良くしながら、光合成の効率を高める先進的な栽培技術です。結果として、健全で高品質なブドウの収穫が可能になります。

現在の栽培品種は多岐にわたり、赤ワイン用品種としてはピノ・ノワール、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、マスカット・ベーリーA、白ワイン用品種としてはシャルドネ、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングなどを育てています。さらに近年では、新たにピノ・グリやアルバリーニョの植栽も始めており、品種の多様性と品質向上を追求し続けています。

丁寧に育てたブドウを、丁寧に醸す

— 熟成・酵母・温度にこだわったワイン造り —

楠ワイナリーでは、丁寧に育てた自社栽培のブドウを100%除梗し、穏やかで透明感のあるワインに仕上げることを大切にしています。白ワインでは、果汁の澱(おり)を静置して取り除く「デブルバージュ」を行い、澄んだ風味と口当たりの良さを追求しています。

赤ワイン、とくにピノ・ノワールに関しては、低温浸漬(コールドマセレーション)を取り入れています。これは果皮からタンニンや香りの成分をゆっくりと抽出する工程で、ワインに複雑で奥行きのある風味を与え、色合いの安定にもつながります。

発酵にはブドウ品種ごとに適した乾燥酵母を使用。亜硫酸の添加は必要最小限にとどめ、ブドウ本来の風味を引き出すことを重視しています。

そして楠ワイナリーのもう一つの特徴が、長期熟成です。多くのワインはしっかりと時間をかけて熟成され、飲み頃を見極めたうえでリリースされます。その味わいは繊細で調和がとれ、日本の食卓、特に和食との相性にも優れています。

楠ワイナリーのワイン造りは、「熟成」「酵母」「温度管理」に徹底的にこだわり、ブドウと対話しながら、食文化と調和するワインを追求する真摯な姿勢の表れです。

楠ワイナリー

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